- 3/4

ジェームズ×リリー

「今日のクィディッチ戦も最高だったわね!」
「スニッチを追ったスリザリンのシーカーをすんでのところで打ち落としたシリウスのプレイ! ホント素敵だったわっ」
「シリウスもよかったけど、なんてったってジェームズよ! 今日もシーカー以上の得点を上げていたじゃない。スリザリンの奴ら、ジェームズばっかり狙ってたけど、彼、背後からの攻撃もことごとくかわすから見てて爽快だったわ。まるで背中に目があるみたい!」
「リリー? どうかしたの、黙っちゃって」
 壁に寄りかかったリリーが鞄から本を取りだしたのを見て、はしゃいでいた周りの女の子達が戸惑ったように顔を見合わせた。
 リリーはすっと顔を上げた。彼女は取り立てて美しい少女というわけではない。だが、きれいなアーモンド形の目とやや太めな眉が印象的だった。強情とも勝気とも違う。信念を持った強い目だった。
「ごめんなさい。私、その人達のことを話題にしたくないのよ」
「その人達? ジェームズとシリウス? どうして?」
 ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックは成績優秀な上、クィディッチの選手で、グリフィンドール寮の点数の稼ぎ頭だった。いつも面白いことをやって皆を盛り上げる寮のムードメーカーでもある。その彼らのことを話したくないだなんて一体どういうつもりだろう、と女の子達は訝しげな視線を向ける。
 友達の不興を買ったことに気づいただろうに、リリーの態度は変わらなかった。
「確かにポッターもブラックも魅力的な人だとは思うわよ。でもね、私、自分の力を誰かに見せつけないと自信が持てないような人って嫌いなの」
「リリー、二人を誤解してるんじゃない? ジェームズもシリウスも、別に威張り散らして歩いてるわけじゃないでしょ? 周りが二人を放っとかないだけよ」
「ブラックは知らないけど、ポッターは確実にそうね。格好いいとでも思ってるのか、いつも髪をいじっては鳥の巣みたいにして……大きい頭をさらに大きく見せようとしてるわ。まったく、みっともないったらありゃしないわ」
「……それって」
 女の子達がいいかけたその時だった。「おーい、エヴァンスー」と怒鳴るような声が響いてきた。リリーは溜め息をつき、さっと壁から離れた。
「悪いけど、私いくわ。うるさい奴がきそうだから」
 つかつかと歩いていくリリーと、その彼女のところに猛然と駆けつける鳥の巣頭の男の子の姿を見比べ、女の子達は不意に噴きだした。
「リリーったら! ジェームズがよく見せようとしている理由には気づかないのかしら」
「他の女の子にはしないジェームズの態度が裏目にでたってわけ」
「教えてあげた方が親切かしらね?」
「いいわよ! 黙ってた方が面白いじゃない。もうしばらくは……ね」