レグルス×クラウチJr
「そんなに俺のことが好きなの?」
いかにも気だるそうなブラックの言葉に、頬が赤くなるのを感じた。人気のない校庭はすでに夕陽の赤さに呑み込まれていた。よかった。気づかれたら恥ずかしかった。寄りかかっていた柵から身体を離して、改めてブラックを見た。
僕はブラックのことが好きだ……と思う。こいつは他の連中と違って、僕を蔑むような素振りを見せたことは一度もない。僕がいじめられないよう、そして僕のプライドを傷つけないように陰で守ってくれていたのだと知った今では、憎しみが嘘のように晴れ、後に残ったのは輝かしい存在に対する憧れにも似た感情だけ。
だが、ここで認めてしまっていいのか。ブラックは男なのだ。それも純血の名家、ブラック家の人間。しかもシリウス・ブラックが勘当された後は、彼が家督を継ぐことになったと聞く。僕も僕で、いつか父から家を譲られることになる。
父に知られたらどうなるだろう。世の摂理から外れたことを嫌う父は、男同士の恋愛にも嫌悪の眼差しを向けるだろう。それに、血筋を残すこともできない。先祖への二重の冒涜だと罵られるかもしれない。
なのに、言葉が口をついていた。
「好きだ……って言ったら、どうする?」
「まいったな。俺、男には興味ないんだけど」
いつもと変わりない、ブラックの顔だった。きれいな横顔だった。肌の白さが、髪や眉の黒さを引き立てる。目鼻立ちのはっきりとした顔だ。女顔ってわけじゃないけど、こいつには【きれい】という表現がしっくりとくる。
思わず伸びた手がネクタイをつかんだ。ブラックは静かに僕を見下ろした。気づけば僕は背伸びして、ブラックの唇を奪っていた。
引きずり込まれるように濃く、青い目がゆっくりとまたたくのを感じ、僕はハッと我に返った。顔を離し、何か言わねばと口を開いたが、詰め物でもされたように言葉がでてこなかった。
ブラックはふと考え込むように唇に指を当て、
「キスっていうのは、そんなんじゃないよ、クラウチ」
「んっ……」
さっきとは反対に、今度は彼の方から口づけてきた。僕の頭を押さえつけて、やや強引に。いかにも手馴れた仕草だった。熱い舌に内側から溶かされそうなりながら、僕はこれまでブラックがキスしてきた相手に嫉妬を感じた。