ドラコ&トンクス
ドラコ・マルフォイにやられたんだ――ハリーの口からあの子の名前を聞いた時、正直ドキリとした。分かっていたはずなんだけどね。遠からずあの子が敵になるってことは。
私はドラコのことをそう多く知ってるわけじゃない。会ったのは数えるほど。それも、あの子がまだ子供の頃だ。
理事長としてホグワーツの視察にきた父親に連れられてやってきたあの子は、ちっとも笑わず、冷めた目のまま校内をうろついてた。ルシウス・マルフォイはなんのつもりで息子を連れてきてるんだろう、と思ってたっけ。連れてきて、結局仕事の邪魔になるからと遠ざけるくらいなら最初から家に置いてくればいいのにって。
ママからナルシッサ叔母の話、それにドラコの話を聞いていたから、初めて見かけた時からあの子のことが気になってた。ある時、あんまり退屈そうな顔をしていたから、ついつい声をかけちゃったんだ。もちろん従姉弟だなんてことは言わなかった。教えたところでどうなる? ママは、血を裏切った自分はブラック家から絶縁されただろうって言ってた。純血はいまだにマグルや混血に厳しい。マグル出身のパパの血が入った私のことも敵視されるだろうって思ったから。
ドラコの態度は素っ気なかった。知らない人に声をかけられて、緊張してたのかもしれない。すげなくされると、逆に意欲が湧く。私はドラコの前で七変化を披露してみた。髪の生え際から毛先までを虹色のグラデーションにしてみたり、動物に変身してみたり。お人形みたいな大きな目を見開いて、真剣そのものの顔をしてたけど、鼻だけをブタに変えたところでドラコはプッと噴きだした。年相応の、あどけない顔だった。
以来、ドラコはホグワーツにくるたび、私の姿を探すようになった。面白いヤツだって懐かれたんだ。
――おねえちゃんの、なまえはなに?
何度か訊かれたけれど、やっぱり言えなかった。名乗ったら最後、折角心を許してくれたドラコから、蔑みの目で見られるかもしれないと思ったんだ。
最後に会ったのは、ホグワーツ卒業間近。もうこれで最後だねって言ったら、寂しさと恨めしさの入り混じった目をしてた。その頃にはうっすらと気づいてた。ドラコが厳格な父親を恐れてること。友達らしい友達もなく、寂しい毎日を過ごしてること。
――もう、あえないの?
そう言い、不意に抱きついてきた。野生の動物のように、いつも一定の距離を置いていたドラコの思いがけない行動だった。少しでも距離を縮めようというのか、爪先立ちをして腕に縋りついてきた。あの時、私は何を言ったんだろう。よく覚えていない。ただドラコの目から涙がぽろっとこぼれ落ちたこと。それを隠すようにパッと身を翻して、一目散に駆けていったことは覚えてる。
闇祓いになったことは後悔してない。今のご時世では常に死と隣り合わせだけど、人の命を守ることには生きがいを感じるから。けど、この先、ドラコが死喰い人として私の前に現れたらって考えると、怖い。私のことを覚えてないあの子は容赦なく杖を突きつけるだろうけど、私の方はあの子にためらいなく攻撃できるか……。