諍い - 6/6

リドル×ジニー

「トム…? ねえ、聞こえてるんでしょ?」
 傍から見たら、ただの独り言。けれど、それはジニーにとっては呼びかけだった。自分に取り憑いている、大切な人への。
 自分が望めばいつでもリドルと会話できることをジニーは知っていた。彼が姿を現わさず、また声をださずとも、心の中で思うだけでも話ができるのだ。
 なのに、今はどんな答えも返ってこない。彼を怒らせてしまったのだ。
 その日、ジニーは人気のない図書室の隅でリドルと話をしていた。取り上げて言うまでもない些細なことを、二人でクスクス笑いながら話していた。どんなくだらないことでも、彼と話すのは楽しかった。
 けれど、彼がほんの弾みで洩らした過去にジニーは不愉快になり、またそれを隠せなかった。
 リドルは同世代だったマクゴナガル教授を知っていて、かつ憧れていたと語った。たったそれだけのことが何故彼との楽しみに水を差したのかは分からない。彼が若かりし頃のマクゴナガル教授の美しさについて触れたからだろうか。
 リドルはすぐに機嫌を損ねたことに気づき、もちろん憧れていただけで特別に好きだったわけじゃないと言い添えたが、ジニーにはそれがいかにもわざとらしく聞こえた。話題を変えようとあれこれ手を尽くすリドルを冷淡に見ていると、彼は突然糸が切れたように押し黙り、姿を消した。
 最初はジニーも気にしなかった。恋人同然の自分の前であんなことを言うなんてデリカシーに欠けると思っていたのだ。けれど、一時間すぎ、二時間すぎても彼が何も言ってこないと少しずつ不安になってきた。彼が自分の中から消えてしまったのでは、と。そして、ハリーのことを思いだして居心地が悪くなった。自分だって、彼がハリーを嫌っているのを知っていて話題にすることがあると思い至ったのだ。
「トム……許して」
 それでも、返事はなかった。ジニーは悲しみに唇を震わせた。と、その時。
「少し頭を冷やそうと思って……君を泣かせるつもりじゃなかったんだ。ごめん、ジニー」
 当惑した顔のリドルが目の前に現れた。ジニーは目元に涙を浮かべたまま、ぶんぶん首を振った。
「謝らなきゃいけないのは、あたしよ。ごめん、なさい……あたしだって、トムに同じようなことしたことあるのに。トムばっかり責めて……」
「いいよ。妬いてくれたのは正直嬉しかったから。
 でも、これは信じて。僕がこんなにも誰かのことを想ったのは、君がはじめてだっていうこと。僕が恋したのは、君だけだよ」
 リドルに差しだされたハンカチを取ると、ジニーは鼻をかんだ。鏡で確かめなくても目元が真っ赤に腫れて、見られない顔になっていることが分かる。こんなにみっともない顔の自分でも好きだなんて、信じてと言われても信じがたい。なかなか顔を覆ったハンカチを離せないでいると、リドルに手首をつかまれて、顔を覗き込まれた。
「君は笑ったところが可愛いんだから、ね?」
ジニーの真っ赤だった顔が、さらに火照った。