ジニーが生まれた時はうれしかった。ジニーもおんなじ赤毛だけど、ぼくや家族のみんなよりも色がうすくて、おひさまみたいにきれいな色をしている。それに、ぱっちりとした大きな目に笑った顔がとってもかわいい。ふっくらとしたほっぺにえくぼができて、だれかがのぞきこんだだけで手足をバタつかせてよろこぶんだ。
フレッドとジョージはぼくのすぐ下の弟たちだけど、ぼくもまだ小さかったから赤ちゃんだった時のことはよくおぼえてない。今では二人がかりでぼくにちょっかいをだしてくるようになった。足を引っかけてころばせようとしたり、メガネをどこかにかくしたり。ぼくはおにいちゃんなのに。そういうナマイキなところがキライだ。
ロンは顔を真っ赤にしてないてばかりだった。夜、ふとんの中に入ってもなき声で目をさますことが何回もあった。最近はそんなことも少なくなってきたけど、ママにだっこされてる時くらいしか笑わない。しごとから帰ってきたパパがただいまのキスをしようとしたらイヤがってないたくらいだ。ヒトミシリがはげしいんだと思う。
だから、ぼくはジニーがすぐにだいすきになった。みんなが外で遊んでる時も、お人形遊びにつきあってやったりしてたんだ。
でも、ジニーのとくべつのお兄ちゃんはぼくじゃなかった。ビルが――一番上のお兄ちゃんが帰ってくると、いつも大切なお人形もほうりなげて走っていっちゃうんだ。
ビルは頭がよくてカッコいい。ママやパパにいつもほめられてる。セキニンカンがあるってどういうイミかは分からないけど、いつも言われてる。やさしいってことかな。
ぼくもビルがすきだったけど、この時だけはキライだった。
「あたし、ビルのこと、だいすき。だから、ビルのおよめさんになるの」
ジニーは今日こんなことを言った。
ジニーと一番遊んであげてるのは、ぼくなのに。そう思ったら、すごくはらがたった。だから、きょうだいはけっこんできないんだよって教えてあげたんだ。そしたらジニーの目が急にウルウルってなって、声をあげてなきだした。
なかせたかったんじゃないのに。ジニーをいじめちゃったと思うと、ぼくもかなしくなった。
ビルが帰ってくるまでジニーはずっとないてた。ぼくが何を言ってもなきやまなかったのに、ビルにだっこされたらすぐにねむった。チャーリーや弟たちがどうしたのって理由を知りたがったけど、ビルはぼくだけのこして、みんなを部屋からだした。
理由をきかれる前に自分から話した。おこられるかなって思ったけど、ビルは何も言わなかった。口を手でかくして、むずかしそうな顔をしていた。
「パースはジニーが好きなんだろ?」
話しおわると、ビルがきいてきた。ぼくはすぐにうなずいた。
「好きなら泣かすようなことを言っちゃ駄目だ。俺にはパースがどうしてそんなことを言ったのか分かるけど、ジニーはまだ小さいんだ。優しくしてあげなきゃ、好きな気持ちは伝わらないよ」
「うん……」
ションボリして、ジニーの顔をのぞきこんだ。ベッドでねむってるジニーは目が真っ赤にはれてて、ぼくのすきな笑顔じゃない。
ビルがつないでいた手をはなすと、ぼくの手をつかんで、かわりににぎらせてくれた。すごくやわらかくって、あったかい。つないだ手がかわったのに、ジニーはおきなかった。なきつかれてるんだ。
ビルはよこにすわって、ぼくの頭をなでた。にっこり笑って、やさしく言ってくれる。
「ジニーはちゃんとお前のことも好きなんだからな」
「……うん、分かってる」
ヤキモチやいたのがバカみたいだ。ビルの言うとおりだ。すきでいてくれるんだから、いいじゃないか。ビルはやっぱりお兄ちゃんだけあっていいことを言うと思う。
「ジニーがホグワーツに入学する頃には、俺もチャーリーも卒業していないんだ。ちゃんと守ってやれよ、お兄ちゃんなんだからな」
なでられた頭がなんだかとっても気持ちいい。ビルをキライになることはもうぜったいないと思う。うん、とうなずいて、にぎった手に力を入れた。
ぼくはもうジニーをなかせないし、あぶないことからもちゃんと守ってあげるんだ。ぜったいに。
(2004/05/21)